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宝石研磨の世界

タイのバンコクで宝石研磨工場、宝石鑑別教室を経営してます。

原産地買い付けの注意点

バンコク宝石仕入れ事情、、、原産地買い付けの注意点

2014年2月10日、タイミャンマー国境の町メソートに宝石買付で行ってきました。

メソートでの買い付けは当ブログでも何度も紹介していますが、この町はヒスイ、スターコランダム、スピネル等のミャンマー産の宝石が集まってきます。私は今月末に開催されるバンコクジュエリーショウの販売商品の買い付けの為に行ってきました。
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以前はメソートで日本人ヒスイ専門業者の方を見かける事も多かったのですが、最近は日本の不景気もあり、プロのバイヤーをこの地で見かける事も少なくなりました。一方で、鉱物マニアや石好きのエンドユーザーが直接メソートに訪ねてくるを頻繁に見かけるようになりました。

ブログやFACEBOOK等を通して原産地情報も簡単に手に入るようになり、エンドユーザーが直接原産地に訪れるようになったのも時代の変遷なのかもしれません。

しかし、原産地買い付けは商品を安く購入する魅力がある一方で、様々なトラブルも多いので、原産地買い付けの注意点を幾つか述べてみようと思います。

原産地での購入は下記の事項を必ず守ってください

①価格交渉で相手が妥協した時は、商品を必ず購入する。
購入の意思がなく、値段を知る為だけの価格交渉は相手にも大変失礼です。その様な冷やかしだけのエンドユーザーをメソートで時々に見かけます。原産地買い付けは値引き交渉が必須になりますが、価格交渉で相手が妥協した時は商品を必ず購入するようにしてください。

②仕入れで失敗しても自己責任で処理し、相手の責任は追及してはならない
原産地では合成石、模造石等のイミテーションも天然石と混在して販売されています。また、低品質の天然石を常識はずれの高額で販売されている事もあります。この様な商品を間違って購入しても、それは無知な自分が悪いのであり、相手の責任は追及してはなりません。バンコクの卸業者はイミテーションを故意に販売した場合は、返品等の対応をしてくれますが、原産地買い付けの場合は全てのリスクは自己責任で処理しなければなりません。

海外で発生する宝石詐欺を詳しく調べてみると、購入側にも問題があるケースを良く見かけます。

『日本で販売すれば10倍以上のお金になる』と現地の宝石ブローカー騙されて、100万円以上の現金を支払って原石を購入した方が、知人の紹介を受けて私の宝石研磨工場を訪ねてきた事がありました。私が原石を調べてみると、クラックが多くて割れやすく、宝石研磨加工すらできない不良品の商品でした。私は本人にハッキリと「クズ石です」と伝えましたが、彼はとてもショックだったようです。

この様に日本で販売すると利益率が良いので大儲けが出来る、とのうたい文句で騙されるケースは旅行者よりも異業種の中小企業の社長さんに多いようです。これらはビジネスに関連した儲け話で騙されたケースですので、この様な場合は購入側にも問題があり、同情の余地はありません。

『特殊なルートでダイアモンドの原石を手に入れたので研磨してほしい』と突然異業種の日本人から連絡を受けたこともあります。ダイアモンドの原石は紛争地のゲリラの資金源になる事を防ぐため、キンバリープロセスと言う輸出書類が国際協定で必要と決められており、特殊なルートにはおそらく問題があります。それに、ダイアモンドの原石からの研磨は専門の機械が必要で、特殊な工場でしか加工できません。また、ダイアモンドの原産国であるナイジェリアを中心とした西海岸のアフリカ人は特殊なビジネス交渉術が必要で、儲け話に簡単に乗ると痛い目に合う事もしばしばです。

大きな話になると、発展途上国の大臣クラスや高級官僚が直接宝石鉱山の採掘権等の投資の話を持ちかける場合もあるそうです。発展途上国の大臣クラスや高級官僚などは、あくまで普通の人で大した事はないのですが、中小企業の社長さんにとっては舞い上がって多額の投資をしてしまう場合もあるうようです。

異業種からのビジネス参入者の場合、本来は信頼のおける東京の御徒町等の日本人の卸業者を通すべきで、知識や経験を積んでからバンコク、原産地とリスクのハードルを上げてゆくべきです。

原産地買い付けは、安く購入できるメリットがありますが、ニセモノも本物に混在して販売されています。

メソートの宝石市場の場合、ヒスイの模造石は染めカルセドニー、天然サーベンティン、染めクォーツアイト、ガラス模造石等がヒスイと同じショウケースに一緒に販売されています。ミャンマー人宝石ブローカーに石名を訪ねると「ストーン!」と答えが返ってきます。その他に模造キャッツアイ、アフリカ産含侵スタールビー、CZ等も販売されており、ミャンマー人宝石ブローカーに更に突っ込んで石名を確認すると「ビューティフルストーン!」と答えが返ってきます。

天然石、天然石(処理石)、模造石の区別は自分で判断しなければなりません。

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ペンライトを使いショウケースの掘り出し物を探す筆者

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ショウケースの中には良品の掘り出し物の天然石、模造石、天然石(処理石)等が混在しており、自分の鑑別眼で選ばなければならない。

今回の買い付けでミャンマー産のスタールビーを購入するつもりでしたが、ミャンマー産のスタールビーは大変希少な石です。世界的な宝石集散地のバンコクでは比較的簡単に(しかし、割高に)手に入りますが、原産地のメソートでは良品のスタールビーは滅多に遭遇する事は無く、偶然にしか手に入りません。午前中に目をつけていた6ピースのスタールビーはミャンマー人ブローカーが強気の販売をし、私の希望値段になかなか落ちませんでした。私はブローカーに「現金うちわ作戦」「何度も目の前を通る作戦」等の交渉テクニックを駆使し、何とか希望価格で購入しようと試みましたが、そうこうしているうちに、タイ人バイヤーが高値で購入してしまい、結局1ピースも購入することができませんでした。ブローカーは私を不憫に思ったのか、別のスタールビーをオファーしてきましたが、調べてみると、含侵スタールビーでした。

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スタールビーは諦め、午後は良品のヒスイの買い付けをしました。
このヒスイは破格の安さで買いました。ヒスイの鑑別はルーペだけの検査では天然石や処理石の判断が難しく、鑑別機関で分光検査をしなければ正確な判断はできません。仮にこの石が天然石の結果で出た場合、大変な高値で販売が可能になります。一方で処理石の結果がでた場合は、高い授業料を支払って経験を積んだことになります。

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ミャンマー人ブローカーはいつものように「ストーン」と言い、石名が判らない状態で購入しました。私の初見ではおそらくハックマナイトではないかと思いました。弊社の研磨工場で面の細かいチェスカットに仕上げた後に、屈折計などで調べてみたところ、、、屈折率や比重の判定結果はフルオライトでした。残念ながら、この石に関してはバンコクの石相場で比べると赤字の仕入れになりました。フルオライトは美しい宝石ですが、靱性、硬度共に低く、劈開性が完全の為、割れやすい石です。ジュエリー制作の世界では割れやすい石は仕入れを敬遠される傾向にあります。

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このショウケースの中で1石のみ上質のヒスイがありました。ミャンマー人ブローカーは5個1セットでなければ売らないと強気の販売です。残り4ピースはくず石なので、何度も1石のみの購入で交渉を試みました。1日何度も足を運び、交渉しましたが、結局私が折れて5石全部購入しました。メソートでの宝石仕入れは交渉に勝ったり負けたりの色々です。

バイヤーと宝石との出会いは一期一会です。仮にこの石の購入を諦めれば、今後この石ともう一度出会う可能性はまずないで私は購入を決めました。買うか否かの判断は運と所持金によりますが、後悔しないようにすべきです。

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知り合いのミャンマー人ブローカーに2人目の赤ちゃんが生まれました。
幼い時からメソートの宝石マーケットで母親と行商していました。その後母を亡くし、たった1人で生きてきた苦労人です。この子のファンである日本人バイヤーも多いと思います。以前は可愛さ満点の笑顔で日本人バイヤーの心をつかみ、メソート最強のブローカーと言われた彼女ですが、今では2人目の赤ちゃんが生まれ、素敵なお母さんです。今後は赤ちゃんの笑顔と共に宝石を販売していくのでしょう。出産祝いに商品を多めに買ってあげました。

宝石ブローカーのほとんどは貧しい生活をしています。
宝石マーケットで1日中売り歩いても無収入の日が多いそうです。少しでも宝石を高く売り、生活を豊かにしたいと願うのも当たり前の事です。時には5倍、10倍の値段を吹っかけるつわものブローカーもいますが、1日200バーツの場所代を稼げないブローカも多いのが現状です。。一方でプロのバイヤーは相手の生活状況などは関係なく、限界まで買い叩き、価格交渉をするのが仕事です。

原産地の買い付けは、品質、真贋、価格交渉はブローカーとの戦いであり、騙した、騙されたの世界ではありません。
購入側は知識と経験を積んで行くべきであり、仕入れの失敗はすべて自分の経験不足が悪いのです。

以前メソートの宝石マーケットで知り合った日本人エンドユーザーが、ここで激安の価格で売っている宝石が、日本で高額で売られていて消費者は騙されている、、と勘違いしていました。これは素人のステレオタイプの見当違いです。日本の厳しい検品に合格する品質の宝石は、このマーケットには僅か0.1%しかありません。ここで良品を見つけるのは大変な作業ですので、1週間から10日間ほどメソートに滞在して納得がいく品質のみ数ピースだけ購入するバイヤーもいます。

エンドユーザーが安心して宝石を購入したい場合は、日本の小売店に行くべきであり、小売店では上質のサービスと確かな商品を購入する事ができます。宝石バイヤー、卸業者、メーカー、小売店等でおのおの厳しい検品を合格した商品のみ店頭で販売されます。なぜ中国人が日本で販売されてるジュエリーを購入したがるのか、、、信頼性が高いからです。

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夕方いつもの場所で夕日を眺め、ビールをのみます。
21時45分バンコク行きバスの出発時間までここでお酒を飲んでいます。


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  1. 2014/02/11(火) 11:02:42|
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