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宝石研磨の世界

タイのバンコクで宝石研磨工場、宝石鑑別教室を経営してます。

パライバカラーの合成ベリルの鑑別

宝石鑑別教室、、パライバカラーの合成ベリルの鑑別

弊社の宝石研磨部門であるNOBU GEM CUTTING FACTORYにパライバカラーの合成ベリルの研磨依頼がありました。この色の合成ベリルは大変珍しいので、鑑別的特徴をご報告します。

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パライバカラーの合成ベリル

色相はパライバトルマリンに大変似ており、インクルージョンもなく大変美しい石です。
合成石はコランダム、スピネル、クォーツがタイや中国で量産されており、安価な価格で供給されています。これらの合成石は詐欺的な目的で(ニセモノを本物として高値で顧客に販売するような、、)使用されることはほとんどありません。主な使用目的は、シルバージュエリーや真鍮製品などの小売価格1万円未満のアクセサリー用の製品に石留めされています。アクセサリーは宝飾品と違い安価に販売されているので、製造コスト上、合成石を使用しなければならないからです。

バンコクにはシルバージュエリーの製造工場も沢山ありますが、これら合成石を大量に仕入れてリングやペンダントに石留め加工しています。以前、あるシルバー工場の合成石の仕入れ票を見たことがあり、発注数が10万ピースと書いてありました。私は余りの仕入れ量の多さに驚いていると、知人のタイ人社長は涼しい顔で「これぐらいは当たり前のように買い付けており、過去には合成石を百万ピースの買い付けたこともある」と言っておりました。

アクセサリー市場は宝飾業界に比べ、数量的には大変巨大なマーケットです。
ニセモノを本物と偽って販売する、、、この様なケースは世間的なイメージで作られたステレオタイプな事であり、詐欺的な目的で合成石が使われているわけではありません。

一方で合成石の中でも、高値で取引される石が数種類あります。
合成ベリルや合成アレキサンドライト等の一部の合成石は原石価格が非常に高く、研磨後のルースも非常に高い価格で供給されています。

合成ベリルや合成アレキサンドライトが、市場にほとんど流通していない最大の理由は、例えば、合成ブルーベリル(アクアマリン)は、天然アクアマリンとほぼ同価格で供給されており、価格が高すぎるために製造コスト上の理由でアクセサリー市場から仕入れを敬遠されています。アクセサリー市場でアクアマリンカラーの石が必要であれば、合成スピネルのアクアマリンカラー又はキュービックジルコニアを使用すれば、安価にバンコクの市場で手に入るので安価な石の方が仕入れで優先されるためです。

合成べリル各色のバンコクでの流通状況は、合成エメラルドが極僅かに市場に流通しているのみで、合成アクアマリンや合成モルガナイトの流通状況は皆無に等しいです。また、今回紹介するパライバカラーの合成ベリルも市場にはほとんど出回っておりません。

以前、この石の原石供給元であるロシア人社長と話した時に、「合成べリルはこれ程美しいのに、なぜ爆発的に売れないのだ、、」と悩んでおりました。私は「天然石と同じ価格では売れないよ、、」と原石価格の値下げをアドバイスしましたが、彼は「製造工程が複雑で、コストが大変高く、合成べリルの技術上、、、、」という話から始まり、 その後は彼の会社がどれほど高い技術力を持っているかについての自慢話を延々と聞かされた思い出があります。

このロシア人社長の方針が変わらない限り、永遠に爆発的ヒットはないでしょう、、、

さて、このパライバカラーの合成ベリルの鑑別上のポイントですが下記の様になります。

屈折率 1.57-1.58
複屈折性
偏光器で見た光軸像は一軸性
紫外線蛍光検査 変化なし
カラーフィルター 変化なし

この数値については、全て天然及び合成ベリルの特性値は全て一致します。但し、天然ベリルでパライバカラーを私は見たことはないので、この色については、合成と判断してよいと思います。一方で、パライバトルマリンと色相が大変似ているので、仕入れ時には念頭に置くが必要があります。

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ロシア製熱水法合成ベリルに見られる独特の成長線

今回研磨したパライバカラーの合成ベリルのうち、8割はインクルージョンがなく、2割はクラック又は熱水法特有のインクルージョンが見られました。また、全ての石にロシア製熱水法で高頻度で見られる独特の成長線(水に砂糖を入れた時に見えるモヤモヤした様な模様)が見られました。

天然ベリルやパライバトルマリンにはこの様な模様は見られないので、鑑別上のポイントはルーペによる拡大検査で、この成長線を観察するのが最も良い方法だと思います。

この石は原石価格が大変高いので、当社で取り扱うことは今後ないと思います。
大変珍しい合成石なので、今回ブログで取り上げてみました。

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  1. 2014/05/29(木) 19:42:56|
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