FC2ブログ

宝石研磨の世界

タイのバンコクで宝石研磨工場、宝石鑑別教室を経営してます。

幻の非加熱タイルビーを求めて

バンコク宝石仕入れ事情、、、幻の非加熱タイルビーを求めて

幻の非加熱タイルビーの原石を求めて、カンボジア国境の町ボーライに行きました。
ボーライはチャンタブリからカンボジア方面に100キロほどの距離になる街で、山ひとつ隔ててカンボジアに隣接する町です。
1950年代~1990年代にかけて、タイ産ルビーの原産地として栄えた町で、この町で採掘されたルビーの原石がチャンタブリで加熱処理され、その後に研磨加工されてチャンタブリでカット石として販売されました。
90年代以降にボーライの鉱山は閉鎖され、タイ産ルビーはマーケットから姿を消しました。
Borai.jpg
タイルビーの最大の鉱山の跡地

鉱山が閉鎖されて20年が立ちますが、私は個人経営の小規模な採掘であれば現在でも行われいるのではないかと推測しました。鉱山から採れたばかりの非加熱ルビーの原石が仕入できないかと推測し、原石仕入れルートの開拓にボーライの町を訪れました。現在ボーライの町に仕入に来るバイヤーは皆無で、原石入手の可能性は限りなく低いと理解した上での視察になります。

町は500mほどの大きさで、ホテルが一軒、セブンイレブンが一軒ある小さな町です。
ホテルの部屋代は350バーツで、VIPルームが一部屋あり650バーツです。この日は私を含め5名の宿泊客が泊まっていました。

期待していた宝石マーケットも採掘している現場もなく、古びた宝石店が町に1~2軒ある程度です。もちろん宝石研磨工場も原石を仕分けているお店も見かけません。

私は原石の仕入れルートを探すために、町の人に直接声をかけ、手当たり次第に聞いて歩きました。
大方の予想通り、この町の宝石マーケットは20年前に完全に閉鎖されており、採掘現場もブローカーオフィスも存在しません。
しかし、聞き取り調査の段階で、ある一人の女性との素敵な出会いがありました。

この女性はこの町の黄金時代に巨万の富を築き、この町の衰退の歴史と共に生きたスラミットと言う60代の女傑です。この町の名士で、最後の宝石ブローカーです。彼女は盛者必衰の町の歴史を私に語ってくれました。
borai2.jpg
1980年代のボーライ宝石市場の様子、現在は跡形も残っていません。

彼女によると、ボーライのルビーは1990年代に政府の政策によって鉱山が閉鎖されました。宝石関連の文献では、この地域のルビーが枯渇し、閉鎖されたのが一般的な認識ですが、実際にはまだかなりの量のルビーが未採掘状態であるそうです。採掘すると違法行為になり警察に捕まります。しかし、住民の一部が秘密裏に鉱区に入り、小規模の採掘をして、チャンタブリに売りに行くことがあるそうです。但し90年代と比べ、極端に物価が上がった現在では、原石採掘はあまり割の良い商売とは言えないようで、現在採掘を本業にしているものはいないようです。

当時の採掘現場には博物館が建てられており、彼女は私を案内してくれました。
博物館の館長によると、陸の孤島のようなボーライの町に訪れる観光客は皆無で、私が久しぶりの客らしく、「今月はこれで給料泥棒と言われなくてよかった」と冗談を言っていました。
borai3.jpg
宝石鉱山博物館、私が一か月ぶりの来館者だそうで、普段は誰も来ないので閉まっているそうです。
携帯番号が玄関に案内されており、来館者が電話をすると館長がバイクでやってきます。


borai4.jpg
博物館の様子、1980年以前に行われた低温加熱の様子です。この技法は100年以上前から行われてきたそうです。
驚いたことに、この博物館にある人形は全て実在の人物で、「この男はまだ生きている、この男は昨年死んだ、、」と館長が説明してくれました。蝋人形は100体以上あり、半分以上はあの世の人だそうで、誰も来館しない博物館に一人でいるのは寂しくて耐え難く、普段は閉めているそうです。


彼女は自宅の倉庫から原石を持ってきて、これがプロイディプ(生の宝石未加熱の原石と言う意味)よ、と言いました。現在ボーライのルビーの昔の在庫をを保有しているのは彼女一人で、彼女は「この町で私以外の宝石ブローカーを信じちゃダメよ」と言いました。

実際、他の宝石ブローカーを訪ねてみると、全員チャンタブリで石を仕入し、チャンタブリで販売する普通のブローカーばかりで、アフリカの含浸ルビーを高額な価格で私に販売しようとする者も数名いました。個人でボーライルビーを採掘をして原石を販売するものがいましたが、小粒の数ピースの原石を大変高額な価格で販売しようとしました。

私は彼女から非加熱のボーライルビーの原石を購入しました。
「この原石がなくなったらボーライのルビーは終わり、私の宝石商売もおしまい」と言いました。

私は「お客さんはいるの?」と聞くと、カンボジア人バイヤーが定期的に購入しに来るそうです。
「お客はあなたが二人目よ」と私に言いました。

世話好きで、寛大で、染み入るような笑顔で語る彼女の魅力に私はすっかり魅了されました。

無駄な視察になると思われた今回の旅、タイルビーの歴史に埋もれた伝説的な宝石ブローカーと出会う事が出来ました。
歴史の生き証人になったような錯覚になり、行って本当に良かったです。

タイ(海外生活・情報) ブログランキングへ
スポンサーサイト



  1. 2016/06/06(月) 12:59:13|
  2. バンコク宝石仕入れ情報
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ